わたモテオープンキャンパス編という伝説 ゆりちゃん回

 

 

皆さんは伝説を目撃したことがあるでしょうか?僕はあります。

 

わたモテのオープンキャンパス編です。

 

今回はその三編ある内の一つ、ゆりちゃん回である喪138について語りたいと思います。

まずは扉絵をご覧ください。f:id:kk_finicky:20180910071354j:image

はい神

最近のオタクは何事にも神と言いたがるという意見も耳にするので、神という表現は使わないようにしたかったのですがダメでした。人は「アッ…神…」と思ってしまったらもう神という表現しか使えなくなってしまうのです。

そもそも日本には神道に由来する八百万の神という考え方が根付いているので、これも不思議な事では無いのかもしれません。恐らくはこの扉絵にも神が宿っているのでしょうし、僕はその神の存在を感じ取ったということなのだと思います。

何故僕は内容にも触れず神の話をしているのでしょうか?オタクくんそういうとこだぞ、という声が聞こえてくる気がします。

 

本題に戻りましょう。

この扉絵で注目すべき点は二人の視線と表情です。

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二人とも違う方向を見ていますし、ほぼ無表情です。でも決して険悪な雰囲気という訳では無いんですよね。お互いに気兼ねする必要がない関係性である事がよく分かります。もこっちが高校で初めて出来た友達と二人だけで出掛けて、しかもこんなに自然体で過ごしているという事実だけで僕は明日も生きていける気がします。

一方のゆりちゃんに関しても同様で、きっと自分が反応の薄い人間であることは分かっていますし、明るい人間ではないことも自覚している筈です。それでも、そんな自分をそのままで良いと肯定してくれるもこっちは一緒にいて居心地が良いのでしょう。

しかし、そんなゆりちゃんともこっちにも違う部分はあります。わかりやすいものを挙げるとすれば、相手によって対応を変えるかどうかという点です。

もこっちは相手によって結構対応が違うんですよね。吉田さんや真子ちゃんといった修学旅行組の面子でも相手によって対応が違います。ネモ相手の時は割と下ネタを言ったり荒い口調だったりしますし、逆に加藤さんの場合は失望だけはされないように…という対応です。

これに関しては、これまでわたモテを読んでいた方はなんとなく分かると思いますし、特に加藤さんのオープンキャンパス回でも重要となってくる要素です。

一方のゆりちゃんは相手によって対応を変えるということはあまり無いように感じます。「いつもの4人」とそれ以外の人とで多少の差はあっても、もこっちほど顕著なものではありません。たまに暴走はしますが、基本的に誰が相手でもテンションは低めですし、仲良くなったもこっちにさえネズミーの時には「言葉と感情が曖昧でわからん…」と思われていました。

二人は似ている部分はあっても、違う人間なのです。

もこっちは変わることを恐れてはいない、というのは言い過ぎですが、変わることに否定的ではありません。これは修学旅行やネズミー、そして友達との学校生活を通して実際に「変わった」人間だからなのでしょう。修学旅行まで一人きりだったもこっちだからこそ、変わることの大変さや良さを知っているのだと思います。

ゆりちゃんは変わることを恐れています。修学旅行を経て手に入れた友達を失いたくないという想いがとても強いのです。彼女はきっと自己評価が低くなってしまいがちなタイプなのでしょう。だからこそ、自分に自信が持てなくて悩み、そんな自信の無い自分からかけがえのない友達が離れていく事、関係が変わることを恐れているのだと思います。これは今回の昼食時に言っていた「吉田さんの進路が聞けない」という部分や、事あるごとに「一緒だね」と言っていたシーンなどに垣間見えました。

ただ、これはどちらの在り方が正しいとか間違っているとか、そういう事ではありません。強いて言うならならば、どちらも「らしい」在り方だと思います。人の生き方や考え方というもに絶対の正解なんてありませんし、時間や何かしらの「きっかけ」によって誰しも変わっていくものです。もしかしたら、今回のオープンキャンパス、そしてラストでもこっちの口から出た「ゆりちゃ…」という言葉がそんなきっかけになるかもしれませんね。

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ここのゆりちゃんの表情、そしてもこっちの独白はとても今の二人らしいと感じました。

 

 

少し話が変わりますが、この喪138という回は完全にふたりきりなんですよね。この先のネモ回や加藤さん回では他のキャラクターとの関係も踏まえて、という展開になっていますが、今回は他のキャラクターが一切登場していません。つまり、喪138という一つの箱の中に二人だけが存在しているのです。これを「物語的な密室(Monogatari tekina Missitsu)」と言います。僕が今考えましたが、ローマ字表記を付けるとなんかそれっぽくなりますね。(は?)

まあ冗談はさて置きますが、この回はふたりきりであることも重要なテーマなのだと思います。意図的かどうかは分かりませんし、僕の深読みでしかない可能性もかなり高いですが、絵としての描写も「ふたりきりであること」を強調していたように感じました。注目して欲しいのはモブの目元です。

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大学やレストラン、回想などでモブキャラが存在するのですが、そのほぼ全てが目元を描かれていません。今回出てきた中で目元が描かれていたモブは下の一人だけでした。

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目元を描かないモブの描き方自体はわたモテで良くあるものではあるのですが、モブをある程度の数登場させた上でここまで少ないのはちょっと珍しいと思いました。それもメインキャラがふたりだけの回となると、敢えてそういう描写にしたのかな?という気がします。他のオープンキャンパス回ではふたりきりでは無い上にちょくちょく目元の描かれたモブが居たので、余計に気になってきますね。

目元の描かれないモブというものが、ふたりきりという状態の強調なのか、ゆりちゃんから見た世界の描写なのか、はたまた僕の深読みに過ぎないのか…最後のが一番可能性高いですね。つらいです。

 

 

以上、伝説のオープンキャンパス編 ゆりちゃん回についてでした。この回は特にラストの2ページが凄いです。オープンキャンパス編が収録されるであろう14巻の発売が楽しみですね。ネモ回と加藤さん回もそのうち語れたらなあと思っています。